妻が不倫などをして「有責配偶者」の場合に財産分与を請求できるのでしょうか?
財産の清算を求めることはできます
令和8年4月から,財産分与についても一部改正する法律が施行されましたが,その内容面は基本は変わっていません。あくまでも考慮要素(家庭裁判所での手続きで裁判官が判断する場合)が明確化されたという点での変更が中心です。財産分与の要素(結婚中に夫婦で築いた財産の清算・離婚後の扶養・慰謝料)という点に変更があるわけではありません。
離婚をする際のお金の問題で大きな要素の一つとして,財産分与があります。妻側が不倫(不貞)をするという有責配偶者と評価される事情がある場合に,財産分与の面でどういった影響があるのでしょうか?
夫側が収入が多い場合などには夫名義での財産の清算が問題になることが多いものと思われます。名義だけではなく,実質が結婚後の夫婦の収入から築かれたものかが問題ですが,この意味での財産の清算は「有責配偶者」かどうかで影響を受けるものではありません。そのため,妻側が不倫をしていることが判明した場合で離婚へと話が向かうときに,財産分与の話がなくなるわけではありません。不倫をされた側からすると,やや納得のいかない話にはなりますが,こういった面はあります。もちろん,慰謝料の請求(不貞行為を理由とするもの)もある中で,どうやって調整を図るのかという問題もあります。
離婚の際のお金の話は,話し合いを行う場合には,自由に進めることができるのが基本です。そのため,離婚に至った原因や夫婦の財産状況(負債の方が多い場合・財産があまりない場合等)・その他さまざまな事情を踏まえて,どのように清算するかを決めることも自由なのが原則です。不貞行為が発覚したことを理由に,無理に書面にサインをさせた場合には,後で書面による合意の有効性が問題になることはありえます。
ただ,財産分与をはじめとして,離婚時にどう取り決めるかは自由です。親権者の指定のように,親権者変更の際に,離婚時の話し合いの状況等が当然に考慮されるわけでもありません。家庭裁判所での手続きの場合には,財産清算の話には,清算以外の要素が当然には考慮されない点は頭に入れておく必要があります。財産を築く過程での例外的な修正要素といえるだけの事情があるかどうかは,単に不貞行為があった以外の点も含めて問題になるものと思われます。
その他(清算としての財産分与以外)の意味合いはどうでしょうか?
先ほどは,夫婦で築いた財産の清算の話以外にも,離婚後の生活保障や慰謝料の要素があるとされています。財産分与の要素についての話です。慰謝料については,有責配偶者の場合には,自身が慰謝料の支払義務を負う点が出てきます。他に何か慰謝料の支払いを求めるような要素があるかどうか・不貞行為の内容その他等も考慮要素になりますので,実際どこまでの影響かはともかく,何かしらの影響は出てきます。ただ,離婚時の慰謝料請求との兼ね合いで調整をすれば,それ以上の考慮はあまりないように思います。
それに対して,離婚後の生活保障についてはどうでしょうか?離婚前の婚姻費用(生活費)については,有責配偶者からの請求を信義に照らし制限をする裁判例が存在します。ただ,明確に有責配偶者であることを要するなどとして,請求の制限はそう簡単にはされないように思われます。
離婚後の生活保障も同じように考えるならば否定的に考えていくように思われます。現状年金分割(離婚時年金分割)の制度が設けられた(老後の生活保障を行う制度趣旨)こともあって,あまり問題になるケースはないように思います。実際に文献(例えば,「離婚に伴う財産分与:松本哲弘著・新日本法規出版12ページ)や裁判例の中では,そうした見解が多数とされています。
そのため,財産の清算はともかく,財産分与で請求を受けることに対して主張すべき点は主張をしていくことになるでしょう。

