不貞行為による慰謝料請求に対して,性的関係が不可能であったということが反論となるでしょうか?
反論にはなりえますが,慰謝料が認められる場合もあります
不貞行為があったということでの慰謝料請求は,性行為があった事を前提にしていますから,性的関係がないことや性的不能の状況になっていたら不可能であるということは反論にはなりえます。性行為の存在自体は事実関係ですし,性的不能という話も不可能であるから事実はなかったというもので事実としてあったかどうかの話にはなります。また,その場合に,何かしら慰謝料の根拠となる事項があるのかという事実と評価に関する問題も出てきます。
性的不能という場合には,健康問題にかかわることが多いのではないかと思いますが,その場合には具体的な根拠となる事項も必要になるものと存じます。健康問題に関する事項はなかなか他の人に言いたくないところではありますので,そこを踏まえてどうするかを考える必要があります。主張する場合には,その根拠となる病気などの話は示していく必要があります。仮に裁判になった場合には,何かしら性行為を裏付ける証拠などがある場合には,それでも性行為が不可能であったという点で主張をすると考えられます。
その場合には,病気などの主張は必要になってくるでしょうし,他の証拠から性行為の存在がそれなりに強く裏付けられそうな場合には,積極的に否定をする証拠も必要になることもありえます。その中では根拠となる医学的な裏付け資料(診断書やカルテなど)も必要になることもケースによってはあるかもしれません。そこでの記載内容等によって裏付けがあるといえるのかが問題となります。治療を継続していたから・通院を継続していたとしても,成果が出ていた等の状況・性的不能といえる状況につながらない病気や所見の場合には,裏付けとならない(逆効果の場合もありえます)ことは注意をしておく必要があります。
また,性的不能ゆえに性行為があったとまでは言えない場合であっても、性交類似行為などが存在する場合には,ケースによっては家庭内の平穏を侵害したことを理由に慰謝料が命じられることもありえます。どういった場合に,慰謝料を命じられるケースがあるのかは別のコラムでも触れています。
その言い分の信ぴょう性や裏付けが問題になります
先ほども少し触れましたが,性的不能ゆえに性交がなかったといえるかは,最終的に裁判になった場合には事実をどう認定されるのかという問題になります。そのため,その言い分が通りそうなのかを考えておくことになります。否定しつつ話し合い解決を図る(金銭解決)ということもありえます。相手方の感情面を刺激する可能性があること・否定しながらの金額提示は低くなることが多いように思われる点をどう考えるのかということも検討ポイントのように思われます。
性的不能というための主張がどこまで必要なのかは,他の証拠からどこまで性行為の存在が裏付けられそうかによります。否定をする必要が高い場合には,裏付けとなる証拠や具体的な言い分を出す必要が出てきます。また,その裏付けを出しても性的不能とは言いにくそうな見通しの場合,言い分や証拠の信ぴょう性に問題があるということなので,言い分が認められない可能性が高くなります。やや無理筋の場合には,話の長期化やトラブルが大きくなる等の可能性もありえます。
見通しなどを考えておくこと・どこまでの情報を出せるのかも考えておく必要があります。