不貞行為に対する慰謝料請求に対し,そこに至る相手の落ち度の主張にはどのような意味があるのでしょうか?
慰謝料の金額への影響等
相手から不貞行為があったのではないかと指摘を受け,その事実を争わないのであれば,慰謝料の支払いをするべきケースが多くなります。金額面を考えるうえで,そもそもその前に一定の不仲があり,その原因に相手の事情もあるということの言い分を言いたいということもありえます。この相手側の事情が夫婦仲の結構な不仲や不貞行為に走る原因があったということもありえますが,この主張の根拠となることには,➀過失相殺➁そもそも慰謝料額が少ない,ということが考えられます。
ただ,不貞行為を行うかどうかは自らの判断で行うことである点があります。➀の過失相殺は,公平の観点から被害を受けた側の行為に起因して損害が生じたといえるだけの事情が必要になってきます。最終的には裁判になった場面で裁判官が判断を示す話になります。不貞行為の性質から見て,そう簡単に過失相殺の言い分が通ることはないように思います。慰謝料の金額の考慮要素(これ自体も裁判になった場面では裁判官の裁量がはたらく場面です),少ないという根拠になる可能性はありえます。ただ,あくまでも事情によっての話でケースバイケースではあります。
そのため,相手に落ち度があるから調整されるべきという話は,基本簡単に受けいられる話ではないという点があります。別に相手に慰謝料などの賠償請求ができるだけの事情があるのかを考えておく必要があります。それだけの事情があるのならば,そうした請求を行うか行わないからこそ,金額調整を行うのかを考えていくことになるでしょう。このハードルはそう低いものではないように思われます。
相手方に主張することで,話が余計ややこしくなる可能性もあります。仮に早めに解決を望む場合(離婚を急ぐ事情があるケース等)では,話をしている時点でそこまで強くその事情を言うことがプラスになるのかどうかは考えておく必要があります。
そもそも,考慮されない可能性もありえます
一番問題と思われる事項は,ご自身が感じておられる,減額すべきではないかというこれまでの経緯が,必ずしも,慰謝料金額その他で考慮されるとは限らないという点です。夫婦仲が破綻とまではいわずとも悪化していたといえるだけの事情(このこと自体が様々な事情を考慮したうえでの評価という面があります)があるといえるかは一つのポイントです。悪化の原因が相手にあるという場合に,そのことが悪化していたといえるのかを含めて問題にはなりえます。やや苦しい話の筋である場合には,考慮されない可能性も出てきますし,話の早期解決を望む場合には問題要因になることもありえます。
不貞行為の有無が問題となっていて,やや無理のある弁解をした場面でも,裁判でも考慮はされない可能性がありますし,慰謝料の金額に影響することも全くないというわけでもありません(影響するかどうかは裁判の場面では裁判官の判断です)。弁解の話と同様に,問題となっていきます。
いずれにしても,話の解決にどこまでの時間をかけて行うか・相手の請求がどの程度の金額かどうか・それまでの経緯から見て,どこまでの支払いが可能なのかなどを踏まえる必要があります。そのうえで,ご自身で把握している事情がどう位置づけられるのかを考えて対応や言い分を考えていく必要があります。