よくある相談

突然子どもを連れて妻が家を出て行った場合に、親権や監護権に関して争う上で影響はあるのでしょうか?

親権や監護権の争いにおける位置づけは?

 帰宅してみると,妻が子どもを連れて家を出ているというケースが生じてしまうと,どうすればいいのかということで途方に暮れてしまうことがあるかもしれません。その原因は様々ありえますし,あった事実関係について,ご自身と相手の言い分が食い違うこともあるかもしれません。もちろん,大きく争いがないこともありえます。

 令和6年に親権の共同行使の内容や離婚後共同親権の可能性を認める法改正が行われましたが,これまでも突然に子連れで家を出ること自体が問題になったケースはあります(裁判例でベースになっている事案でという意味です)。子どもの引渡しが問題になったケースで,連れて家を出ることが違法ではないかという話とそのことが子どもの監護権を決める上でどういう位置づけになるのかという問題です。

 
 子供を連れてこれまでと異なる環境へ移す場合には,子どもの心身への影響が大きなケースもありえますので,ケースによってはマイナスの評価を受ける可能性があります。別のコラムでも触れていますが,親権や監護権が争いになる場合には,様々な考慮要素があると考えられています。令和6年の法改正前の裁判所での審理や裁判例の整理をした文献はたくさんあります(比較的最近の裁判官が書いたものとして,「子の監護・引き渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究」・司法研修所編・法曹会)が,最近は子どもの年齢などに応じたニーズにどれだけこれまで答えてきて,現在・今後対応できるのかが重要とされているようです。

 突然知らない環境で安定した生活を送ることができないという話になると当然そうしたニーズに対応できなくなるので,その意味でマイナスの評価につながる可能性はあります。ただ,事実としてDVや虐待が存在する場合には避難やむなしという場合もありえます。そうしたDVや虐待が実際にあったのかどうかが問題になることもあります。
 いずれにしても,これまで多くの要素の中の一つの事情として突然子どもを連れて家を出たことは,その背景事情とともに問題にはなってきたように思われます。連れて行った先の環境がどうなのか・子どもの生活がどうなのかを含めての話になる点がここでのポイントになっていきます。

 

令和6年民法改正の影響はあるのでしょうか?

 令和6年の民法改正はこの記事を記載している時点(令和7年4月時点)では施行されていません。法改正により,離婚前の親権の共同行使(共同で決定することが前提)となることを踏まえ,意見対立などがある場合に裁判所が関与して決めるべき事項などや単独で決めることができる事項などが明確に定められました。

 単独で決めることができる事項は,日常の服装や軽度の医療行為を受けるかどうか・短期間の旅行に関する事項が該当するとされています。これに対し,子どもの転居や学校の入学などは単独で一方の親のみが決定することができない事項とされています。
 そのため,突然子どもを連れて家を出る事は,一方の親(ここでは妻)だけで本来は決めることができない事項になるはずといえます。とはいえ,夫婦双方で決めることができないだけの緊急の事情がある場合には,話が別とされています。DVや虐待等がある場合には,ここでいう緊急やむを得ない事情があるとされています。そのため,このことを理由に家を出るということはあるかもしれません。

 緊急の事情があったといえるだけの事実関係,DVや虐待の有無などが問題になることもありえます。実際にそうしたことの有無が監護権や親権の点で大きな影響が出るのかどうかには,令和6年改正法の下でも,背景事情や様々な考慮要素の中で判断をされる可能性があるものと思われます。また,子どもの居所指定権に関する親権行使を誰が行うのか等の裁判所の手続きでも問題になる可能性もありえます。

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