離婚時に養育費は不要という話をしていたのに,後から養育費の請求を受けることはあるのでしょうか?
請求を受ける場合や支払義務が出てくる場合はありえます
離婚調停などの場合に,未成年者がいるにもかかわらず養育費の支払義務が生じない形での話はあまりないように思います。ただ,離婚時の様々な経緯から,協議離婚の場合には,口頭で養育費はいらないという話がなされる場合もありえます。離婚後にしばらく時間が経過してから,養育費の支払いを求める連絡や養育費の調停の申立ての通知が来ることもありえます。
この場合に,以前は,養育費はなしという話をしていたのにおかしいのではないかということをお考えになるかもしれません。
養育費について明確にゼロという話があったといえるのかどうかが問題にあることもあります。要は,明確な合意がない・離婚時における経緯から見て,そういう話も一応は出たということなのかどうかが問題となります。この場合には,そもそも養育費の合意がなされたのかどうかが問題となってきます。合意があったとは言えない場合には,新たに養育費の取り決めをする(裁判所の手続きでは,この話を前提とした調停や審判へと話が進む)ことがありえます。
また,一応合意があるといえる場合も,子どもの権利を親が一方的にゼロとすることができるのか・脅迫行為などによってなされたのか等,その有効性が問題になることもあります。いわゆる標準算定表で多く養育費が生じるはずという場合には,そうした問題が出てくる可能性があります。
こうした場合には,養育費の支払義務があることを前提に話しが進むことはありえますので,離婚時に口頭で話をしたから確実に養育費の請求をしないという話になるとは限らない点は頭に入れておく必要があります。
明確な合意があると言えない場合は?
明確な合意がないということになると,新たな合意をすることになります。ただし,家庭裁判所での調停を含む話合いの申し入れがなされた場合です。令和8年に施行される法律では,養育費の協議がなくても,「法定養育費」といって,一定の範囲の養育費の請求およびこれに伴う差押さえの話が出てきます。そのため,明確に話し合いがないからといって,何も支払わなくてもリスクがないとは言い切れません。
話し合いをする場合に拒否をしていても,相手が家庭裁判所への調停を申立てている場合には,裁判官から審判によって養育費の支払いを命じられる可能性があります。話し合いを拒絶している場合に,裁判所に何も出さないと,資料や言い分を出している場合と比べて不利な内容の判断(毎月の支払額が増えるなど)がなされることもありえます。審判手続きでは,相手の言っている事項に根拠と裏付けがなければ,その言い分通りになるとは限りませんが,ご自身の言い分や根拠となる資料を出さない場合には,その内容は反映されません。
基本的には,裁判所の手続きであれば,双方の収入と子どもの年齢をベースに,減額する事情があるか・増額になる要素があるのか,その範囲がどこまでかが問題になります。離婚後,ご自身の親の介護に費用がかかるから等,言い分によっては考慮がされないこともありえます。そうした面を頭に入れておく必要もありますし,後で大きな請求と支払いが生じそうな場合には,離婚時にそういった将来発生しうる事情を踏まえてきちんと決めておいた方がリスクを避けることができる場合もあります。
離婚時はもちろん,後になって請求を受けた場合に,どのような見通しになりそうなのか専門家に相談をする・調べるなどして,目途をつけておいた方がいいように思われます。

